こんにちは。
メロディウス広報担当のメロ子です!
2024年の日本レコード大賞に選ばれた
韓国アーティストの楽曲について、
各歌詞の哲学的な考察をメロディウス先生に
伺い以下にまとめました!
特別賞 TOMORROW X TOGETHER
「ひとつの誓い」考察
「僕たちの『違い』は『間違い』じゃないんだ」
という言葉は、多様性の容認を超え、
むしろ他者性が関係性の本質を
豊穣にするという洞察を示している。
存在論的に見ると、
この言葉は「自己」と「他者」が
いかに相互依存的であるかを問いかけている。
「違い」という概念は、存在するもの
すべての独自性を肯定する一方、
普遍性を否定するものではない。
かくして、変化し続ける私たちの中に
「不変なるもの」を見いだす試みが始まる。
「遠く離れても 歳をとっても
ひとつの誓い We’re never changing(決して変わらない)」
という表現は、ヘラクレイトスの
「同じ川に二度入ることはできない」
への応答のようである。
全てが流転する現実の中で、
それでもなお愛や誓いという
「変わらざるもの」が存在するという信念が、
この歌詞には宿っている。
それは、変化という現象の中に
安定性の可能性を求める、
人間の形而上的な欲求を反映している。
優秀作品賞 NewJeans
「Supernatural」
「私の感情はどんどん深くなる
(My feeling’s getting deeper)」、
「私たちの縁は深い(우리 인연은 깊어)」
という言葉は、
運命の連鎖が如何にして
人間の内的経験を豊かに
し得るかを示唆している。
「超自然的な」という表現は、
まさに日常的な経験を超越し、
世界の奥底に潜む「見えざる秩序」に
触れる試みと見ることができる。
さらに、
「その意味を見つけなきゃいけない
(I gotta see the meaning of it)」という言葉は、
ハイデガー的な「存在の意味」への問いを喚起する。
存在するだけではなく、
それが何故存在するのか、
そしてどのように意味を与えるのか。
この探求は、
私たちが如何にして「他者」と交わり、
自己を超越する瞬間をつかむかという
形而上的な命題を提示する。
特別国際音楽賞 LE SSERAFIM
「CRAZY -Japanese ver.-」
「天使のように振る舞って、
でも狂ったように装う
(Act like an angel and dress like crazy)」
というフレーズは、社会的規範に従う人間と、
その規範を超越しようとする
存在との間の緊張関係を如実に表している。
この歌詞には、自己と社会との対立が描かれ、
私たちが本来的に「あるべき姿」を
模索する中で、「あるがままの自己」との
間でどれほどの断絶があるのかを明示している。
また、「何が正しいかなんて気にしないで」
という歌詞は、ニーチェの「価値の転倒」を思わせる。
ここでは、「善悪」の二項対立は相対化され、
自己の真の欲求を貫くことが
究極の「善」とされている。
この視点は、私たちが自己を実現するために、
どれほど社会的拘束を
脱構築し得るかという実存的命題に帰着する。
新人賞 ILLIT
「Magnetic」
「冷静を装おうとしてるけど、
君が欲しい気持ちは隠せない
(Baby, I’m just trying to play it cool,
But I just can’t hide that I want you)」
という言葉は、
アウグスティヌス的な
「欲望の秩序」を想起させる。
すなわち、人間の理性と欲望の間には
絶え間ない葛藤が存在し、
この引力は単なる生理的なものではなく、
精神的な引力としても作用している。
「遠くからでも、ああ、
なんてことだ、君に惹かれてしまう
(저 멀리서도 oh, my gosh, 끌어당겨)」
というフレーズは、
他者への不可避的な引力が
いかに距離や障壁を超越するかを暗示している。
スピノザの「コナトゥス」が示すように、
すべての存在は自己保存を追求しながらも、
他者との交わりにおいて
その目的を達成しようとする。
この歌詞は、
人間の欲望が単なる自己の充足を超え、
他者との存在論的な関係に
帰着することを示している。
総括 四つの楽曲に共通する哲学的テーマ
これらの楽曲を貫く共通の主題は、
「つながりの哲学」と「自己の実存」である。
それぞれの歌詞が異なる形で表現しているのは、
他者とのつながりが
自己の本質的な在り方をどう規定し、
変容させるかという問いである。
この探求は、デカルト的な
「孤独な主体」のモデルを超え、
他者性の探求に立脚している。
愛、運命、欲望、そして自己表現。
それらは単なる感情的な事柄ではなく、
人間が存在する上で不可欠な
形而上学的課題である。
これらの楽曲は、現代の聴衆に対し、
これらの根源的な問いを
感覚的かつ詩的に提示し、
自己と他者、変化と不変の境界に立つ
人間存在の本質を問い直すきっかけを提供している。