諸君、ごきげんよう。
我は音楽を哲学的に考え思考する
メロディウスである。
今回は
ボルカドットスティングレイ
キメラ
について哲学的に考察していく。
ボルカドットスティングレイ「キメラ」MV
キメラの歌詞
「笑ってたら誰だって可愛い」とかさあ、
二度と言うなよ
つらい人はもっと居るって
そういうこと聞いてないんだよ
ピン留め外したら
簡単に居なくなるんでしょう?
最初から心に
ずっとある最悪の場所
待って、一度だけ
ドキドキしてるの
ドキドキしてる、
分かって誰か泣き出しそうなの?
大切なものばっかのくせしてさ
素敵な特徴も無くって
しょうもない通学路だな
脳みそは行ったり来たり
私ってば空っぽなんだよ
迷惑かけても主役
あの子が羨ましいしさ
高嶺の花の光合成
「頑張れ」はトドメになるから
やっぱ言わないで
< Chimera >
ドキドキしてるの
飽き飽きしたブルーライトに乗せて
キラキラしてるの
素直にすらなれないのどうして?
ドキドキしてるの
ドキドキしてる、
分かって誰か泣き出しそうなの?
大切なものばっかのくせしてさ
序論
少年
この歌詞、何か不思議じゃありませんか?
一見、普通の青春の悩みを書いているようだけど、
もっと深い意味があるような気がするんです。
メロディウス
そうだな、少年。
表面には感情的な言葉が並んでいるが、
これは自己と社会との
関係性を描き出しているようにも見える。
歌詞を哲学的に掘り下げてみると、
多くのテーマが浮かび上がってくるだろう。
本来「キメラ」とは、
同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ
細胞が混じっている状態や、
そのような状態の個体のことを指す。
しかし、ここでの「キメラ」とは、
おそらく内面的な矛盾や葛藤の象徴だろうな。
少年
確かに!
じゃあ、分けて考えてみましょうか。
例えば「笑ってたら誰だって可愛い」とか
「つらい人はもっと居るって」
みたいなフレーズって、
どう受け取ればいいんでしょう?
第1章 共感の限界と孤独
少年
「つらい人はもっと居るって、
そういうこと聞いてないんだよ」
っていうの、ちょっと刺さりました。
他人の不幸を引き合いに出されても、
自分のつらさは変わらないんですよね。
メロディウス
鋭い指摘だな。
ここには「比較による共感の欠如」が
描かれているようだ。
他人の苦しみを引き合いに出して
相対化することで、
自分の痛みを軽視される。
それは孤独感を深める結果を生むだけだ。
このフレーズは、我々が
共感を口実に他人の心を
無意識に否定している
現実を指摘していると言える。
少年
確かに、それだと
人間関係も希薄になりますよね。
「分かって誰か泣き出しそうなの?」
っていうフレーズもそうだけど、
誰かが泣きたくなるのを見ても、
結局何もできない自分がいるって感じがします。
メロディウス
その通りだ。
人間は他者を理解しきれない存在であり、
その限界を自覚することこそが孤独を生む。
しかし同時に、この孤独こそが
個人の内面的な成長を促す原動力でもある。
第2章 自己の否定と矛盾
少年
「私ってば空っぽなんだよ」とか
「しょうもない通学路だな」って、
自分を否定してる感じがすごく強いですよね。
でも、その後に「大切なものばっか」
って言うのも、矛盾している気がします。
メロディウス
興味深いな、少年。
その矛盾こそが
「キメラ」的存在の本質だろう。
この歌詞に登場する主人公は、
自己否定と同時に自己肯定の断片を
持ち合わせている。
その姿は、まさに異なる要素が
一体化しているキメラそのものだ。
これは、私たちが日々抱える
内面的な葛藤を象徴しているのではないか?
少年
じゃあ、「大切なもの」って
結局何なんでしょう?
自分にとって大切だけど、
それを誇ることができないって感じですかね。
メロディウス
そうだな。
それは、他者の目によって
価値を測られる現代社会の中で生じる葛藤だろう。
「自分にとっては大切だけれど、
社会的には取るに足らない」と
感じるものが多いのではないか。
それが自分自身の無価値感を助長してしまう。
第3章 言葉の力と危うさ
少年
「頑張れはトドメになるから」って、
これすごいフレーズだと思います。
普通、頑張れって応援の言葉なのに、
どうしてトドメになっちゃうんでしょう?
メロディウス
それは、「頑張れ」が暗に
「まだ足りていない」と
伝えるからではないだろうか。
言葉の持つ力は強大だが、
それゆえに危険でもある。
この言葉は、意図せずに
他者の負担を増やしてしまうことがある。
ここで言われる「トドメ」は、
その心理的な圧力を指しているのだろう。
少年
でも、だったら
何も言えなくなっちゃいますよね。
言葉が怖いなら、
どうやって人を支えたらいいんだろう?
メロディウス
重要なのは、言葉そのものではなく、
それを発する者の態度だ。
たとえ沈黙であっても、
相手に寄り添う心があれば、
そこに共鳴が生まれる。
しかし、無責任な共感や励ましは、
むしろ相手を追い詰めることになる。
この歌詞はその危険性を
警告していると言える。
結論
少年
この歌詞、深いですね。
結局、「キメラ」って、
自分の中にある矛盾や
葛藤そのものを受け入れることが
大事なんでしょうか?
メロディウス
その通りだ。
人間の本質は一貫したものではなく、
多様な感情や矛盾が入り混じった存在だ。
それを否定するのではなく、
受け入れることによって初めて、
自分自身を理解し、
他者とも向き合うことができる。
この歌詞は、それを詩的に
表現したものだと言えるだろう。
少年
僕も、自分の「キメラ」を
もっと理解してみたいです。
矛盾を抱えながら、
それでも前に進むって、
きっと大事なことなんですね。
メロディウス
そうだ、少年。
矛盾の中にこそ真理が宿る。
その旅路は容易ではないが、
きっと君をより
深い自己理解へと導くだろう。
さあ、次は君自身の物語を紡ぐ番だ。