諸君、ごきげんよう。
我は音楽を哲学的に考え思考する
メロディウスである。
今回は
ヨルシカ
太陽
について哲学的に考察していく。
ヨルシカ「太陽」MV
太陽の歌詞
美しい蝶の羽を見た
名前も知らずに
砂漠の砂丘を飲み干してみたい
乾きの一つも知らずに
美しい蝶の卵を私につけて
緩やかな速度で追い抜いてゆく
ゆっくりゆっくりと
あくびの軽さで
行ったり来たりを繰り返しながら
美しい蝶の羽を見た
醜い私を知らずに
海原を千も飲み干していく
少しも満ちるを知らずに
美しい鱗の粉よ
地平を染めてあり得ない速度で
追い抜いてゆけ
ひらりひらりと木洩れの光で
行ったり来たりを繰り返しながら
私が歩いた道も、
私の足も私が触った花も、
私の指も私が死ぬ日の朝も、
その他の日々も緩やかな速度で
追い抜いてゆく
ゆっくりゆっくりと
あくびの軽さで
行ったり来たりを繰り返しながら
ゆっくりゆっくりと彼方へ
恐る恐ると羽を広げながら
序論
少年:
「メロディウス、
この歌詞を読んでいると、
何か美しくも儚いものに
触れている気がするよ。
蝶の羽や卵、砂丘や海原、
どれも自然の一部だけど、
そこには人間の存在や時間の流れが
溶け込んでいる気がしてね。」
メロディウス:
「確かに、
この歌詞には自然と人間の関係、
永遠と一瞬の対比がある。
『蝶』という存在が象徴的だね。
生の儚さ、生命の循環、
そして人間が持つ渇望と欠如が
この詩に深く織り込まれているようだ。」
少年:
「それをどういう風に
解釈すればいいのかな?
章ごとに分けて話していこうよ。」
メロディウス:
「そうだな。
ではまず、
この歌詞の象徴性から入り、
その次に『人間の渇望』、
そして最後に『時間の概念』を考察してみよう。」
第1章 蝶の象徴と人間の存在
少年:
「蝶って、何か特別だよね。
羽の模様が美しいけど、
命は短いし、粉のような繊細さがある。
それに、歌詞の中で
『名前も知らずに』とか
『私を知らずに』って
繰り返されているところから、
人間の目に見える美しさと、
その奥にある未知への憧れが感じられる気がする。」
メロディウス:
「その通りだ。
蝶は古くから変化と変容の
象徴とされてきた。
蛹から羽ばたく姿は、
死と再生、そして魂の自由を
表すことも多い。
この歌詞の中では、蝶の羽が
『私』の存在を超越し、
知らないままに去っていく。
これは人間がどんなに
自己認識を深めても、
自然や世界そのものを
完全には理解できないことを
象徴しているように見える。」
少年:
「なるほど。
蝶が追い抜いていく姿は、
僕たちが美しさを見つめても、
それを完全には手に入れられない
苦しさを示しているのかな。」
メロディウス:
「それだけでなく、
美しさそのものが人間の感覚を超えた
存在であることも表しているのかもしれない。
蝶の羽は『地平を染める』という
表現があるが、
それはまさに人間が知覚できる
範囲を超える美を暗示している。」
第2章 渇望と満たされない人間の心
少年:
「次に気になるのは、
『砂漠の砂丘を飲み干してみたい』
『海原を千も飲み干していく』
っていう部分だね。
ここには何か満たされない気持ちや
渇望が感じられる。」
メロディウス:
「その渇望は人間の本質に根ざしている。
哲学者サルトルが言うように、
人間は『欠如』の存在だ。
つまり、常に何かを求め、
それが満たされた瞬間に
また別のものを求める。
砂漠や海原を飲み干すという比喩は、
無限を求める人間の欲望と、
それが決して満たされない
虚無感を象徴しているだろう。」
少年:
「でもどうしてそんなに
求めてしまうんだろう?
少しも満ちることを知らないなんて、
苦しいだけじゃないか。」
メロディウス:
「それこそが人間の宿命ともいえる。
『美しい鱗の粉よ、地平を染めて』
という言葉には、人間の心が渇望を通じて
未知を追い求める姿勢が描かれている。
渇望は苦しみであると同時に、
成長の原動力でもある。」
少年:
「それなら、この歌詞が描く渇望は、
何か目的を持っているのかな?」
メロディウス:
「それは目的というより、
プロセスそのものに意味があるのではないか。
蝶が『行ったり来たりを繰り返しながら』
飛ぶ姿のように、
渇望は常に動き続けるものだ。」
第3章 時間と存在の哲学
少年:
「最後の部分、
『私が歩いた道も、私が死ぬ日の朝も』
っていうところ、なんだか怖いけど、
少し慰めを感じる。
時間が蝶の羽のように、
軽やかに過ぎ去っていくように思える。」
メロディウス:
「ここで描かれる時間は、
人間が通常捉える直線的な時間ではなく、
むしろ循環的で非物質的なものだ。
『ゆっくりゆっくりと』という表現には、
時間がすべての存在を
包み込みながら進む優雅さがある。
それは、死すらも自然の一部として
捉える視点を提供している。」
少年:
「でも『恐る恐る羽を広げながら』
って書かれているから、
完全に受け入れられているわけではないのかな。」
メロディウス:
「そうだね。
それは人間の二重性だ。
死の不可避性を理解しつつも、
それを恐れる。
しかし同時に、死を超越した存在や
時間の流れに魅了されてもいる。
蝶の飛翔がその両方を象徴しているように思える。」
少年:
「じゃあ、この歌詞にある蝶は、
時間そのものでもあり、
僕たち人間の意識でもあるんだね。」
メロディウス:
「そうとも言える。
蝶が『彼方』へと向かう姿は、
時間が常に未来へと進むことを暗示している。
そして人間は、
その時間の流れに巻き込まれながらも、
自らの羽を広げ、
未知に向かおうとする存在だ。」
結論
少年:
「この歌詞の蝶は、
美しさや渇望、
時間といった多くの象徴を
持っているんだね。
でも、それを完全に
理解することはできなくて、
ただ追いかけるしかないんだ。」
メロディウス:
「その通りだ。
この詩は、人間がいかに世界を知覚し、
求め、そして時間の流れに
身を任せるかを描いている。
蝶の姿は、私たちが持つ儚さと
可能性の両方を映し出している。
結局のところ、この歌詞が伝えているのは、
どんなに儚いものでも、
その一瞬が美しいということだろう。」
少年:
「つまり、蝶のように、
恐る恐るでも羽を広げることが大事なんだね。」
メロディウス:
「そうだ。
そしてその羽ばたきの中に、
私たちの生きる意味があるのだろう。」